インタビュー・レビュー, 導入事例

アンフェアな月:DanteコンバーターML-32D導入インタビュー

人気推理小説『アンフェアな月』が舞台化され、2018年2月~3月の期間、東京都にある天王洲銀河劇場で上演されました。人気女優である篠田麻里子さんが主演を務めたこともあり大きな話題となりました。
この公演では出演者が使用するワイヤレスマイクの音声信号をまとめる為に32chアナログ/Danteコンバーター『TASCAM ML-32D』が導入されました。

導入の経緯についてエンジニアリングを担当されたK2soundの門田さん、株式会社BEYONDの鯨井さんにお話を伺いました。

 

ティアック:ML-32Dを導入しようと思ったきっかけを教えて下さい。

門田さん(以下敬称略):ワイヤレスマイクのDante化がまずメインです。YAMAHAの卓を使っているので、YAMAHAのステージボックスも考えたのですがコスト面と、もう少しシンプルなものを探していました。他社でも同じような機器があったのですが、ちょっと高価だと考えていたところ、TASCAMのML-32Dを見つけて、「これ、もしかして行けるかも」と思い導入しました。

ティアック:ワイヤレスシステムをDante化するというニーズは以前からあったのですか?

門田:お芝居の業界だけかもしれないですけど、マイク数が多いので、Danteを使いシンプルにワイアリングするニーズはありました。アイドルグループの現場などでは、60本もワイヤレスを使っているケースもあるので。

鯨井さん(以下敬称略):「30本分、マイクケーブルを立ち上げる?」、「ちょっと煩雑だよね」みたいなのが、正直あるので。

門田:今はSHUREやbeyerdynamicもそうですけど、ワイヤレス受信機本体にDanteを搭載し始めていますよね。だからといってDanteのパッチがいっぱい出てくると煩わしさはあるので。あと現場のトラブルシューティングとして、アナログケーブルのXLR端子で接続されている方が、トラブルの際に対応が早いというのはありますね。内部パッチでミスをするよりはね。

ティアック:前段階のアナログ部分で修復が可能であれば、ということですよね。最終的には転送までデジタルで一本化出来れば理想ですが、多チャンネルをいかにスリム化するかという課題を解決するためにDanteを採用するというところですね。実際にご使用になられていかがでしたでしょうか。シンプルなコンバーターなので、特にこれといったことはないかもしれませんが(笑)

鯨井:逆にその方がいいです(笑)ML-32Dは本当に何のストレスもなかったです。「おお、いいじゃん!」みたいな(笑)

門田:ストレスもなくて、いつも使っているワイヤレスで、いつも使っているミキサーで、いつも使っている出力なので、音に何か変化があれば、たぶん僕や鯨井が感じるんですけど、ML-32Dは全然ストレスがないです。

ティアック:先ほどML-32Dのリアパネルを見させていただいたら、プライマリーだけ接続されていました。セカンダリーは使用されなかったのですか?

鯨井:現在のシステムでは、まだセカンダリーを構築できていないので使用しませんでした。

門田:でも将来的にはちゃんと考えていかないとなと思っています。

ティアック:今回のような演劇の現場では、二重化も重要視されていくのでしょうか。

門田:そうですね、考えてはいますけど、現時点ではなかなか。やはりどの現場を見ても、そこまで出来てるところはまだ実は少なくて。おそらく今のお芝居音響の課題ではあると思うのですが、予算と安全性との配慮というか。

ティアック:今回ネットワークオーディオ周りはどの様な構成になっていますか?どのくらいのポートを使用しているのでしょうか?

門田:卓周りが一番使ってるかな。

鯨井:機材はミキサー周りでPC4台、コントロール1台、卓が2枚、Danteコントローラー用にもう1台、あとはLM 44のコントローラーのPC1台。単純に卓周りだけでほぼ8ポート。今回の舞台はアクションがないんですけど、アクションがある場合は、サンプラーが必要なので、そこで更に6ポートぐらい増えるんですよ。今回基本的にオペレートは2人でやってるんですけど。1人1卓で、お互い1人につき一つのスイッチングハブを使用して、それ同士を繋げる、みたいな感じになってますね。

門田:そうですね。人が増えるたびに8ポートの設置が増えていくみたいな感じですね。

ティアック:仮にリダンダントにした場合は更に倍になっていくわけですね。先ほど、1台のスイッチングハブでVLANを切るという手法もあるが面倒、という話がありましたが、すごく実感できました。プライマリのみでも意外と多くのポート数が必要になるのですね。

門田:12ポートあったら万々歳ですけどね、etherCONで。でも、なかなか・・・。

鯨井:結局VLANを組むとなると、ネットワーク知識が必須じゃないですか。それだと、何かトラブルあったときに、その知識を持ってる人しかトラブルシューティングが出来ないのは、致命的なことなので。例えば今回は東京公演だけですけど、地方公演に行ったときにネットワーク知識がない人間しか現場に行けない場合にどうするか、と考えるとなるべくシンプルに。要は、デジタルの恩恵は受けたいけどシンプルにしたいっていう。

ティアック:最後に全体のシステム構成について教えていただけますか。

鯨井:今それぞれ大きく分けて、卓側にスイッチングハブがあって、あと、今回ちょっとイレギュラーではあるんですけど、スピーカーの真横にスイッチングハブがあって、そこから分岐して更に、先ほど見ていただいたワイヤレスのとこにもスイッチがあるっていう形になってて、それぞれのスイッチを全部繋いで、スイッチ経由で全部Danteの信号を行き来させています。

システム図

ティアック:このシステムが全てアナログだと想像すると相当なケーブル数と配線になりますね。Dante導入によってシンプルなシステムが構築できていることが実感できました。本日はありがとうございました。

 

※現在、K2sound様ではDanteコンバーターML-32DのブレイクアウトボックスとしてTASCAM BO-16DX/INを2台追加導入して頂きました。

 

舞台『アンフェアな月』Webサイト
 

 

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