TASCAMから新たに発売されたマスターレコーダー・AD/DAコンバーター「DA-3000SD」。その使用感や性能について、著名なレコーディング&ミキシングエンジニア、小寺秀樹氏にお話を伺いました。小寺氏は「Chage 」「ももいろクローバーZ」「ONE OK ROCK」など多くのアーティストの作品に参加する一方で、 2023年の第65回グラミー賞ではMasa Takumiのアルバム「Sakura」でMixを担当し、見事受賞を果たしています。
2024年10月、六本木にあるレコーディングスタジオROKU-stでDA-3000SDの使用感や音質についてインタビューを行いました。
小寺氏は、主にマスターレコーダーとしてDA-3000SDを使用しており、過去に「阿部真央」のアルバム制作の際に先代モデルであるDA-3000をで使用した経験があり、その音質と性能に信頼を寄せているとのこと。 「ミックス後にPro Toolsで2トラック音源をバウンスするだけでなく、DA-3000でDSDフォーマットでも録音しました。その時のクオリティが非常に良く、今回のDA-3000SDにも期待していました」と小寺氏は語ります。
DA-3000SDの音質について尋ねると、小寺氏は「音質自体の方向性は先代モデルと似ていますが、より余裕のある音になった印象を受けました」と述べています。さらに、マスタリング前の音源にはDSDフォーマットを選ぶ理由を次のように説明します。
「WAV形式よりもDSDフォーマットの方が音質に優位性があります。DA-3000SDを導入する最大の理由は、DSD録音が可能である点です。DSDは特にマスタリングに向いています」。
AD/DAコンバーターの性能についても、プロの視点から高い評価を得ています。「再生時の音とAD変換後の音が変わらないのが非常に良いですね。マスターレコーダーとして、この価格帯でこの音質を実現しているのは驚きです」と、そのコストパフォーマンスの高さを強調しました。
操作性についても高評価を得ています。メニュー画面は先代モデルを引き継ぎ、直感的で使いやすい設計。「取説を細かく読まなくても使えるのが良いです。『1176 』のようなシンプルな機材が好きなので、この点も非常に気に入っています」と語る一方で、PCキーボードによるコントロール機能や入出力端子にXLRを採用している点など、実用性も評価されています。
DA-3000SDでは記録メディアがSDカードのみとなりましたが、小寺氏は「特に不便は感じない」とのこと。「2.5インチサイズのSSDにも対応しているとさらに便利かもしれません」と要望について触れました。
また、1Uサイズというコンパクトな設計により、DSDファイルが使えないスタジオの場合でも本体を手軽に持ち運べる点も魅力としています。
小寺氏は、「特にエンジニアの方におすすめしたい」と述べています。「DSDフォーマットはWAVよりも音質的に優れています。マスタリングスタジオでDSDがさらに普及することで、音楽制作の品質向上にもつながるでしょう」と期待を込めて語りました。
TASCAM DA-3000SDは、プロの現場で求められる音質と操作性を兼ね備えた、非常にコストパフォーマンスの高い製品です。小寺秀樹氏の評価を通じて、その実力が改めて証明されました。これからの音楽制作の標準機材となる可能性を秘めたDA-3000SDは、DSD録音を重視するエンジニアにとって、頼もしいパートナーとなるでしょう。
プロフィール
小寺秀樹
有限会社ベリーグー レコーディング & ミキシング エンジニア。1971年生まれ、岡山県出身。2011年9月よりVERYGOOに所属。Mixを手掛けたMasa Takumi(宅見将典)「Sakura」が、第65回グラミー賞の最優秀グローバル・ミュージック・アルバムを受賞。