インタビュー・レビュー
レコーディングエンジニア・沢口真生さん 「なによりレコーダーの核となる 『マイクプリの優秀さ』 は、設計陣へ拍手!です。」

デジタル一眼レフカメラ(DSLRカメラ)による映像制作が拡充するにつれ、各社からDSLRカメラと一体化することが可能なポータブルレコーダーが市場に出始めました。DR-70Dもこうした目的のために最新のニーズと機動性、価格を検討してリリースされた新製品だと感じます。
私の場合は、フィールド録音、特にハイレゾ(96kHz-24bit/4CH)サラウンドで機動的に録音できる本機の実力に魅力を感じ導入しました。
以下に様々な条件下での使い勝手と音質、機能をまとめましたので、本機の購入を検討される場合の参考にしていただきたいと思います。結論先行で言えば、この価格帯で多様なユーザーの録音環境に対応した機能と、なによりレコーダーの核となる「マイクプリの優秀さ」は、設計陣へ拍手!です。

操作性と使い勝手

国内外でフィールドサラウンド録音をハイレゾで行う場合のキーは、バッテリー寿命とメモリーにあると思っていますので、本機もまずここからチェックしました。内部バッテリーは、単3電池4本で駆動します。バッテリーケース部や電池の+/‐表示も分かり易いので接続ミスをすることはありません。96kHz/24bitで4CH録音ですと、60GBメモリーで約14時間(30GBで7時間)の記録容量がありますので、一日のフィールド録音としては十分です。4つの外部入力全てにファントム電源を供給した状態でも内蔵バッテリーで連続録音して約2時間持ちましたので、こちらも心配ありませんでした。さらに本機は、携帯充電器5VバッテリーをUSB接続で使用することができますので、これを使えば丸一日バッテリーの心配をする必要はありません。使用するSDカードのフォーマットは、メニューの『Others』内にあるSystem-Formatを選択してExecで実行します。

録音までの各種設定は、メニュー画面でBASICからOTHERSという8項目別で使用目的に応じて設定していきます。マイク入力は、XLR/TRS端子入力からミニジャック入力/内蔵マイクといった豊富な選択が可能です。
主な設定項目は、

  • 録音ファイルのデータ形式
  • 録音トラック選択
  • 入力設定(CH1/2/3/4に何を接続するか)
  • ファントム電源供給電圧48/24V設定
  • HPF周波数設定
  • リミッター設定
  • モニター音の選択

と言ったところがポイントになりますが、メニュー画面で分かり易く設定できます。トラック毎の設定では、1トラック目が終わると自動的に次のトラックの設定画面へ切り換わりますし、個別に1-4のプッシュボタンで切り換えることもできます。
全ての設定が終わると録音画面で設定情報が一覧表示されますので、これも大変便利です。
画面上では、

  1. 録音経過時間表示
  2. レベルマーカー(-16dbFS)
  3. モニター音選択
  4. スレート音設定
  5. 電源表示
  6. 録音可能時間
  7. HPF/リミッター
  8. 最大ピークレベル
  9. ファイル名
  10. 録音トラック表示
  11. ファントム電源表示

があり、情報を一括して把握する事ができますので、機動性が優先する制作現場ではとても有効な表示だと思います。特にメモリーの残表示は目安が分かり有益です。

多様な入力でのフィールド録音

sanken CUW-180接続によるサラウンド録音

私がフィールドサラウンド録音で使っているsanken CUW-180(X-Yステレオマイクロホン)を2本使用して4CHフィールド録音を行いました。
音源は、以下の4パターンです。

  • 河のせせらぎをワイドショットの位置で録音 *1
  • ピーク成分をみるために水滴音をアップで録音 *2
  • 歪み感を見るためにピーク表示が頻繁に点灯するレベルで録音
  • S/N比とHPF特性をみるために林の中にてフルレベルでアンビエンス録音

*1、*2 以下よりサンプル音源を試聴いただけます。(96kHz、24ビット)

録音した音源をPyramix DAWへコピーし、それぞれの最適部分を1分間に編集してモニターしました。

 

ミニジャック対応OKM-IIダミーヘッドマイク/CXSA3キットによる街ブラ録音

街の音を録音する時に便利な、耳に直接装着するダミーヘッドマイクがあります。ミニジャック入力で外部に専用の電源BOXがあるもので、これを装着した状態で電車内、地下街、交差点と年末のアメ横の喧噪を録音しました。アメ横では、レベルを大きめに設定しピークリミッターの動作と音質をチェックすることにしました。

SOUNDMAN OKM-IIの使用方法はこちら
※SOUNDMAN社サイトへ移動します。

※ダミーヘッドマイクによる収録の特長をより実感していただく為に、ヘッドホンのご使用をおすすめいたします。

 

 

DR-70D内蔵マイクによる街ブラ録音

最後にDR-70Dの内蔵マイクによる車の往来を録音しました。内蔵マイクには、アクセサリーキットを購入すると専用のジャマータイプ風防が取りつけられます。一般的なウレタンフォームの風防は、フィールド録音では実用的でないので、この対応もニーズをよく捉えていると思います。

 

 

フィールドレコーディング機としての評価

 

モニターから再生される音を聴いて、まずは、驚きました。川音はレンジも広く、時々せせらぎが出すピーク音もきれいに再現しています。水滴のアップも、マイクプリが貧弱だと歪み感のあるピチピチといった音になりがちですが、ここでもしっかり音を捉えていますし、歪みをみるためにピーク表示が多発するレベルにゲインアップして録音しても音が崩れません。
また、マイクプリのS/N比を見るためにゲイン設定をHIGHにした状態で、さらにフルゲインで録音した林の中のアンビエンスでも、ノイズは全く聴こえませんでした。HPFは、OFFから40~220Hzまで5段階の設定がありますが、フィールド録音で180Hzまでは音質変化なく使えます。

街ブラ録音でも車内や地下街、交差点といった空気感の違いもよく録音されていますし、ステレオ感も十分です。

DR-70D内蔵マイクでの街ブラ録音位相計表示

さらに良いと思った点は、ピークリミッターの動作と音質についてです。(通常、この価格帯のレコーダーにあるピークリミッターはおまけ程度の動作音質なことが多いので私はバイパスしています)アメ横の喧噪の波形を見ると店の呼び声などでかなりつぶれていますが、この部分を聴いても、DR-70Dではつぶれた感じが無く、大変素直です。-1.0dBFSでリミッティングしているようです。DSLRカメラでの撮影と同時に録音をするような時には有用ではないでしょうか。

※アメ横 PEAK TESTの波形表示

最後に内蔵マイクの音質と定位、広がり感をチェックしましたが、これもこの価格帯の内蔵マイクとしては十分実用的な音質と定位でした。例えば、DSLR収録現場であればブームマイクやワイヤレスの仕込みマイクをCH-1/2に接続し、内蔵マイク(CH-3/4固定)で現場のアンビエンスを録音し計4CHで収録しておけば、ポストプロダクションでも有益ではないかと思います。また、映像との精密な同期が可能なジャムシンクや外部ワードクロックには対応していませんが、録音の開始/終了で自動的にカチンコ代わりの信号を記録できる「スレート機能」があるので便利です。

実際の録音時には、まず電源を入れると電源状態、メモリーの有無、ファンタム電源の確認など事前にメッセージが出ますので、ミスのない録音を始める事ができます。こうしたメッセージ機能は、DSLR収録を行う担当者にも心強いサポート機能です。

プロフィール

沢口 真生さん

1971年千葉工業大学 電子工学科卒 同年 NHK入局 ドラマミキサーとして「芸術祭大賞」「放送文化基金賞」「IBC ノンブルドール賞」「バチカン希望賞」など受賞作を担当。1985年以降はサラウンド制作に取り組み海外からは「サラウンド将軍」と敬愛され国内外でサラウンド制作普及のための勉強会「サラウンド寺子屋塾」やワークショップ、セミナーを行っている。

2007より高品質音楽制作のためのレーベル 「UNAMASレーベル」を立ち上げ、24bit/96kHz、24bit/192kHzでのハイレゾ2CH/サラウンド音楽配信による制作を行う。2013年の第20回日本プロ音楽録音賞で初部門設置となったノンパッケージ部門2CHで深町純「黎明」(UNAHQ-2003)が優秀賞を受賞、2014年リリースの[Four Seasons] (UNAHQ2005)は、斬新な表現でサラウンドアルバムとしてe-onkyo musicベストセラーアルバムとなる等ハイレゾ時代へのソフト制作を推進している。

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