聖飢魔IIの『レクターH.伯爵』として有名なキーボーディストの石黒彰さんには、ご自宅でCelesonic US-20x20をご愛用頂いておりますが、ポータブルなセッティングとしてiXRもご活用頂いています。その用途や使用感、また石黒さんの考えるモバイル環境についてインタビューさせて頂きました。
ティアック:iPad向けのオーディオインターフェース、iXRをお使いいただいてありがとうございます。どのように使われているのか、お話をお伺いできればと思います。
石黒さん(以下敬称略):実は僕はiPadを使っていなくて。今回は、ツアーに行くためにMacbook Airを買ったんですよ。iPadももちろん考えたんですけど、使っているアプリとかのことを考えたら今回はこっち(Macbook Air)かな~と思って。というのは、iPadを持ち運ぶのとMacbook Airを持ち運ぶのでそんなに差がないかなと思ったんです。
ティアック:ツアー用で今回のシステムを導入されたんですね。
石黒さん:そうです。ツアーというよりは、ツアーに行く間のホテル用システムですね。
ティアック:ツアーはどちらに、どのくらいの期間だったんでしょうか?
石黒さん:博多です。武田鉄也さんの舞台で、後半に海援隊のステージがあって、そのバックバンドです。お芝居なので、長期公演なんですよね。結果的には3週間以上滞在しました。でもその間もホームページを更新したり、facebookに投稿したり、音楽関係の仕事もしないといけないのでモバイル環境を作ろうということになって。家のパソコンを持っていく訳にはいかなかったので、オーディオインターフェースをどうしようと思っていて。ちょうどiXRの事を教えてもらって、「あ!これだよ~!」って。(笑)
ティアック:ホテルでミキシングなどもされたのでしょうか?
石黒さん:いや、練習がやっぱり多かったです。音源を聞きながら鍵盤を弾く感じで。あとは資料音源を聞くことも多かったかな。音質は全く問題なかったですね。この音質で、このサイズっていうのがいいよね!
ティアック:音楽制作向けの小さいオーディオインターフェースとしては、他にもUS-2x2というモデルもあって、US-2x2はデスクトップでの使用を念頭に置いたモデルなんです。逆にiXRはモバイル性を念頭に置いたモデルで、バックにも入るように設計しました。
石黒さん:そう!これ(リュックサック)に入るんだよね。Macbook Airと、iXRと、小さいキーボード持っていけば、セッションくらいならできちゃうからね。最近は持ち運べるキーボードが増えているんですけど、音の選択肢がかぎられるじゃないですか。そういう意味ではMacbook Airの方が音の選択肢が多くて助かることが多いんだよね。なので、僕としては軽いキーボードだけというセッティングよりは、Macbook AirとiXRをプラスしたセッティングがいいですね。NORDは音素晴らしいんだけど、やっぱり重くてね~。持てるけど、これを持って長時間は歩けないよね。(笑)
ティアック:ライブではソフトシンセを使って、iXRから出力すると思うんですが、レイテンシーは問題ないですか?使う場合は、インプットモニターで演奏するのでしょうか?
石黒さん:インプットモニターじゃなくて、パソコンから返ってきた音を聞いて弾きますけど、レイテンシーは全く問題ないですよ。普通に弾けます。音質についても、そりゃ家のCelesonic US-20x20と比べたらCelesonic US-20x20の方が音はいいんですけど、モバイル環境としては十分です。結線も楽だし。ACアダプターもないでしょ?これが助かるんだよね。すごく単純明快。ほとんど説明書読んでないし。
ティアック:石黒さんでしたらiXRは説明書いらないかもしれないですね。
石黒さん:Macにつなげば勝手に認識するし。専用ソフトもWEBから落とすだけだし。Logicでバッチリ動いてますよ。あと、こないだはレコーディングでも使ったんですよ。ソフトシンセの音を出すインターフェースとしてね。ラージモニターで聞いても、音は全然問題なかったです。
ティアック:ご自宅で打ち込んだデータをスタジオで再生したんでしょうか?
石黒さん:いや、普通に楽器として演奏しましたよ。ちなみに鳴らしたのはOmnisphereでした。この用途だと、出力だけのオーディオインターフェースでもいいくらいです。(笑)あ、でもMIDIは欲しいな。
ティアック:MIDIやっぱり使いますか?どういう時に使うのでしょうか?
石黒さん:最近キーボードもUSBで接続できるのが多いんですけど、パソコンのUSBポートが埋まっちゃうんですよ。iXR繋いで、ドライブつなぐと、もうポートがないんですよ。ドライブは、ソフトシンセのデータが入ったSSDなんで外せないし。そうすると、キーボードはMIDIでつなぐしかないんですよね。ハブとか嫌だし。
ティアック:なるほど。Macbook AirのHDDだとダメなんでしょうか?
石黒さん:音がいい音源だと、容量がいるんです。あと単純に、資料音源とかはすごい数なので、Macbook Airに音のデータは収まりきらない。だからMIDIはつけといて欲しいな~。
ティアック:iPadを使った音楽制作についてはどのようにお考えでしょうか?
石黒さん:今のところ、モバイルは注目しているけどiPadの優位性は見いだせていないんですよ。ひとつの要因はソフトシンセの種類にあって、パソコン用とiPad用だとまだまだ数が違うんだよね。パソコンの方が数が多いから。
ティアック:Macbook AirにLogicを入れて、ソフトシンセを入れて、動作は問題ないんでしょうか?
石黒さん:そりゃトラック数をたくさん使ったら重くなるかもしれないですけど、そういうのは家でやればいいだけの話で。自宅環境を持っているミュージシャンにとっての「モバイル環境」って、ある程度用途が決まっていると思うんですよ。ミキシングとかしないわけで。
ティアック:石黒さんにとってのモバイル環境っていうのは、いい音で演奏ができる、というのが重要なんですね。
石黒さん:そうだね。でも不安があるとしたら、基本的にコンピューターは振動に弱いというところかな。その点では iPadの方が多少はいいかもしれない。でも、機材を全部持っていかなくていいのは確かで、 モバイル環境を考えておくのは最近大事だなと思います。
ティアック:若い時って、なんというか、機材全部持っていきたい感じはありましたよね。みんなスタジオで音源積んでましたし。(笑)
石黒さん:そうそう!(笑) 「このアナログシンセの音!」って具体的に要求される場合を除いて、結局、使う側の問題なのかなと思ってます。優れたギタリストは、どんなギター弾いてもその人の音になりますしね。
ティアック:そういえば、博多ではVL-S3BTもお使いいただいたと思うのですが、そちらはいかがでしたでしょうか。他に製品にご要望などはございますでしょうか?
石黒さん:音はVL-S3BTも全く問題ないよ。モバイル環境としては、結線が楽だったらもっと良かったかな。実は今回機材車が用意されたので、自分で運ばなくて良かったんだよね。だから持ち運び自体は全然苦じゃなかったんで、結果的には不満はなかったけどね。欲を言えばもっと小さくなったらいいな。左右が分れないスピーカーあるじゃないですか。あそこまで行くと定位感とか確認できないので、左右は分かれたスピーカーで、もっとモバイルなやつを、、、。
ティアック:なかなか難しそうですが、検討します。(笑)今日はありがとうございました。
プロフィール
石黒彰
ピアノ・オルガン・キーボード・エレクトリックバイオリン/作・編曲/マニピュレート/サウンドプロデュース
高校生の頃よりブリティッシュハードロック、プログレッシブロックに傾倒しキース・エマーソンに影響され国立音楽大学に入学。卒業後ジャズ、フュージョンに傾倒しジャズ理論などを学ぶ。『鳥山雄司Zi-Space』でプロデビューし、以来、数多くのセッション、ツアー、レコーディングに参加。『山本恭司』や『北島健二』のデビュー30周年ライブに参加するなどのほか、作編曲家として『鋼の錬金術師』、『NARUTO』、『デスノート』等、アニメのキャラソン制作や、ドラマの劇伴も手がける。1992年からは2年間聖飢魔IIで『レクターH.伯爵』としても活動し、1999年の解散ライブにも再び参加。2015年は(石黒彰として)再集結した『聖飢魔II』の「全席死刑ツアー」及び、年末から年始にかけてイギリスを代表する世界的ギタリストである『ガスリーゴーヴァン』の『ガスリーゴーヴァン ジャパンツアー 2015~2016』に参加した。