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和太鼓のダイナミックレンジを32ビットフロートで確実に録音

和太鼓奏者 由有さん

2023年2月中旬、和太鼓の文化が根付く埼玉県鳩山町へ向い、同年1月にTASCAMブランドからリリースした広いダイナミックレンジを誇る32bitフロート対応ポータブルレコーダー『Portacapture X6』で和太鼓収録に挑む。

今回の収録は、和太鼓奏者である由有さんにご協力をいただき実現した。由有さんは、ソロやチームで活動する和太鼓のプロ奏者でありながら、様々な楽器を用いた和太鼓楽曲の制作や、和太鼓教室を開催し、地元鳩山町や和太鼓業界のさらなる活性化に取り組んでいる。

 

収録現場の鳩山町今宿コミュニティーセンター収録現場の鳩山町今宿コミュニティセンター
ステージ上に設置された尺四太鼓ステージ上に設置された尺四太鼓

収録を行うのは埼玉県鳩山町にある今宿コミュニティセンターの300人規模ホール。ステージに設置された尺四太鼓は思ったより小ぶりだが、重さは20kg、欅の木をくりぬき牛皮を張ったもので、相当高価なものに見える。和太鼓は、歴史の古い楽器であるが、由有さんが取り組む和太鼓のアンサンブル「創作組太鼓」は戦後に始まったという。その後、世界中に広がりを見せる人気のジャンルである。今回は、その中でも「斜め打ち」という東京でのみ見られる珍しい打法で、オリジナルの楽曲『野郎』を披露していただく。

 

録音機材とセッティング

尺四太鼓

ステージ上で太鼓の位置が決まると、試し打ちが始まる。一打。強烈な音圧だ。足から伝わる振動、ホールの空間全体が震えるように鳴る。和太鼓はジェット機と同じくらいの音量があるとのこと。
試し打ちでの鳴りを参考に、録音エンジニアがマイキングを行う。

 

今回の収録は、Portacapture X6内蔵のステレオマイクでホール全体のアンビエント音を収録するという。内蔵マイクをワイドなステレオ収録ができるA-B方式に設定し、今回は太鼓から7.8mの距離に設置した。

太鼓から7.8mの距離に設置されたPortacapture X

 

太鼓から3mほどの距離に設置された外部マイク2本

さらに、レコーディングでは定番のマイクであるAKG『C414 XLS』と、DPA『2011C』を太鼓から3mほど離れた位置に設置しPortacapture X6の2系統のXLR入力に接続。この2本で、太鼓の明瞭な鳴りを狙う。

 

Portacapture X6

Portacapture X6の録音設定

■使用アプリ…『MANUAL』
■録音フォーマット…32bit float/96kHz
■各入力のGAIN設定
・内蔵ステレオマイク(A-B方式):LOWモードの+9.5dB
・AKG C414 XLS:LOWモードの+5.0dB
・DPA 2011C:LOWモードの+0.0dB

 

 

収録本番

由有さん演奏中

いよいよ収録本番がスタートし、Take1の収録を終え録音の確認をしたところ問題が発生した。

和太鼓には「カン」という太鼓を持つための部品がついているのだが、叩くとここから鈴のような余韻が鳴っている。なるほどこれは太鼓の音だ。しかし、これとは別に何かシャラシャラという音が聴こえる。太鼓を叩きながら、発信源を探していく。
何度か繰り返しているうちに、ステージ裏で保管されていた機材の金属部品が太鼓の波動を受けて共鳴していたのを突き止めた。会場のノイズまでもしっかり収録できるPortacapture X6の収音感度の良さがわかる。しかし、収録されるノイズをできるだけ減らすため、共振している機材を固定したり、太鼓から遠ざけたりしてTake2を録音。ノイズが減り綺麗に録れている。

 

マイク位置を変更外部マイクの位置を変更
本番収録中の様子本番収録中の様子

さらに、セッティングを追い込むためマイクの位置を変更する。AKG C414 XLSの位置を和太鼓の前方斜め45度、距離約2mの位置へ移動。太鼓の音圧に合わせてマイクに搭載されている-18dBのPADを使用したとのこと。DPAの2011Cは、前方3mの位置に、演奏時の掛け声と枠打ち(太鼓の角と叩いたときのカッという音)を狙う。このセッティングで再度収録したところ、これがOKテイクとなった。収録音源を確認した奏者由有さんからも「生の太鼓の鳴りにより近い音がする」という感想が出る。

 

録音テイクのチェックの様子録音テイクのチェックの様子
モバイルアプリ『Portacapture Controlモバイルアプリ『Portacapture Control』によるリモート操作(※)

 

※『Portacapture Control』によるリモート操作を行うにはオプションのBluetooth®アダプター『AK-BT1』が必要です。

 

収録を終えて

ステレオ録音でも臨場感はあるが、Portacapture X6の特長である2系統のXLR入力に外部マイクを接続することで、マルチマイクならではの迫力のある録音が実現した。また、32bitフロートで録音することで今回の和太鼓のようなダイナミックレンジの広い楽器でもクリップによる録音の失敗リスクを低減し確実に録ることができる。収録後の編集は、ダイナミックレンジは録ったまま無加工で、複数のマイクの設置場所による時間軸のズレを合わせた音源となっている。実際に収録した音源はこちら。

 

Portacapture X6は、一台あれば野外から音楽演奏まで様々なシーンで簡単に良質の録音ができるレコーダーだ。仕込みやリハーサルができない現場や常に録音音声のモニターができないといった場合でも、32bitフロート録音をすることで録音の失敗を防ぐことができる。多くの皆様にも是非手にしていただき、様々な現場でPortacapture X6の32bitフロート録音の実力をご体感いただきたい。

 

和太鼓演奏
由有(ゆう)

 

録音
江見達彦(えみたつひこ)

 

使用録音機材

・6トラックポータブルレコーダー Portacapture X6
・マイクケーブル KLOTZ MC5000
・マイク AKG C414 XLS
・マイク DPA 2011C

 

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プロフィール

太鼓奏者
由有さん

由有(ゆう)さん

幼少の頃より父・望月左武郎(邦楽囃子方)/望月流家元・ 十一代目望月太左衛門(人間国宝・望月流宗家四代目望月朴清/故人)から長唄囃子の手ほどきを受ける。
12歳の頃、「鳩山鼓韻の会」に入会。本格的に和太鼓を始める。
18歳で東京のプロ太鼓団体「大江戸助六太鼓」に入門。
国内コンサート・海外ツアー等の演奏活動に参加。門下生の指導・都立高校の和太鼓部講師を務め、次世代の和太鼓奏者を育成。
2001年、和太鼓奏者の活動に加え、西海岸系パンクバンド「jammed train」にドラマーとして参加し、都内各所でライブハウスで活動。インディーズでアルバム2枚、コンピレーション1枚をリリース。
2002年、邦楽器バンド「Shake CHA-z」の結成。糸原昌史(和太鼓)/藤舎也生(笛) /山口ひろし(津軽三味線)らと共に、国内各地でコンサート活動。同バンドで2004年にオリジナルアルバム「雷-ikazuchi-」(全11曲)をリリース。
2006年、糸原昌史と和太鼓ユニット「style II.com」を結成。コンピューターシーケンスと和太鼓の同期演奏という斬新なスタイルでステージ活動。
2009年、「大江戸助六太鼓」より独立し、ソロ奏者として活動。須磨和声(エレキバイオリン)/榎本陽平(エレキピアノ)と和洋コラボユニットを結成。邦楽・洋楽という垣根をなくした新しいジャンルの音楽を展開する。
また、小鼓・大鼓・締太鼓の邦楽囃子の三拍子+和太鼓という、 邦楽打楽器のみの演奏による現代舞踊用の作曲活動も行っている。

 

 

 

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