レコーディング・スタジオ
CRESCENTE STUDIO (クレッセントスタジオ):レコーディング導入インタビュー『DA-3000』『UH-7000』

東京都世田谷区にあるCRESCENTE STUDIO(クレッセントスタジオ)のエンジニア菊地健太郎さん、作曲家/音楽プロデューサー/ベーシストの立川智也さん、パーカッション奏者のクリストファー・ハーディさんに、導入後レコーディングでお使いいただいた『DA-3000』と『UH-7000』についてのインタビューにご協力いただきました。この日、実際にレコーディングが行われたクレッセントスタジオで、比較試聴などを交えながら音質や操作性などに関してのご意見を伺うことができました。

ティアック:
まず『DA-3000』はどのようにお使いいただいていますか?
菊地:
(以下敬称略)
マスターレコーダーとして、DSD5.6MHzで使用しています。以前からDSD対応のレコーダーを2.8M/5.6MHz両方のサンプリングレートで使用していたのですが、2.8MHzで録音したものはマスタリングスタジオへ持って行ったときに、環境の変化による音の違いを顕著に感じていました。ただ、『DA-3000』ではそういった違いはそれほど感じませんでした。音はフラットな印象ですね。
立川:
(以下敬称略)
僕はUniversal Audio Apolloから『DA-3000』にデジタルで接続して、マスターレコーダーとして使っています。これまではDAW上でバウンスすると音が変わってしまっていたのですが、『DA-3000』に録音したものは本当にモニターのままの音が聴こえるな、という印象でしたね。あと、ワードクロックのマスターを『DA-3000』にしたら、位相がすごく良くなったと感じました。普段の作業環境にはもうアナログミキサーもないので、シンプルにPCとインターフェースから『DA-3000』に録音して、マスタリングスタジオにも『DA-3000』があればそのまま同じ音で進められますし、それが一番いいですよね。
菊地:
『DA-3000』を持ち込んだとしても1Uでコンパクトですし。小さい荷物で済む、というのは大きいです。
立川:
そうですね。あとはやっぱり、音が良いです。値段の先入観なしに聴いてみて、後から値段を聞いてびっくりしました。
クリス:
(以下敬称略)
私は2、3週間ほど前に、ライブレコーディングに使ってみました。マイクプリアンプは『UH-7000』を使ったので、全部タスカムで揃いました。すごく小さな音しか出ない楽器をステレオワンポイントで録音したのですが、ダイナミックレンジがとても広い。キレイで、すごく良かったなと思います。家で作業する場合はデモ程度の録音をしています。『DA-3000』は『UH-7000』とコンビにして簡単に持ち出せますし、そのまま菊地さんに渡せます(笑)。
菊地:
なんでもします(笑)。
ティアック:
普段のレコーディングでもレゾリューションを高く、ということは意識されますか?
菊地:
例えばPCMの96kHzと48kHzの差がどこにあるのかというと、容量が大きくなる割に感動は少ないかな、と思います。それだったらもう、DSDで録音した方が圧倒的に良い。だから、この価格でDSDのマスターが作れるというのは、すごく有り難いです。あとは、もう少し普及してくれて「マスター音源、DSDで良いですか?」と言っても、嫌がられることが少なくなるといいですね(笑)。アナログ卓のアウトをそのまま聴いている状態にすごく近くなるので、その後の作業も余計なことを考えなくて済むというか。
ティアック:
『DA-3000』は、AD/DAコンバーターとしてもお使いいただけます。ここで、同じファイルをDAWと『DA-3000』本体からそれぞれ再生し、簡単に聴き比べをしてご感想をいただきたいと思います。
立川:
『DA-3000』は、録音時の状態にすごく近いですね。
菊地:
そうですね、スッキリした音です。インプットモニターを聴きながらミックスして、マスタリングスタジオにも同じように『DA-3000』があればそのまま作業できる。変なクセもないし、使いやすいと思います。
立川:
あとは楽器の定位に若干差があるのかな、と。『DA-3000』の方が、楽器の音が団子にならずに広がっていると思います。
菊地:
そうですね、音の分離は『DA-3000』の方が良いと思います。
ティアック:
操作性に関してはいかがでしたか?
クリス
僕、実はこれマニュアル見ていないんですよ。
菊地:
僕も全然見てないです。
クリス
でも、パパっとすぐ簡単にできたんですよね。おそらくスタジオの人たちは要求のレベルも高いと思うのですが、僕みたいなミュージシャンでもすごく使いやすい。一般の人にも使えて、この値段でこのクオリティというのは嬉しいですね。
立川:
確かに、よく「高価な機材じゃなければ良い音じゃない」と言う人もいますが、そういう人にこそ是非使って聴いて欲しいですね。
ティアック:
では次に、『UH-7000』はどのような印象をお持ちでしょうか。
ティアック:
僕が使ったのは、Macのシーケンスに立ち上げて。ベースを突っ込んで、ヘッドホンでモニターっていう。ベースの音はすごく良かったです。
ティアック:
DSPミキサーはいかがでしたか?
クリス
これはいい。すっごく分かりやすかった。これ、MIXER PANELボタンで消えるのがいい! そして、押すとまた出てくるんですよ。
菊地:
これ、ちょっと嬉しいですね。
クリス
すごくいいです。
ティアック:
立川さんは、これからどのような使い方を想定されていますか?
立川:
これは『DA-3000』とセットで持って行って、人の家でプリプロやって帰ってきて作業するとか、フットワークよくできそうです。そのプリプロテイクを、OKテイクとしても使えるほど音がいいと思います。特にベースって低音が重要なので、音の締まりが悪いとすごく弾きにくいんですよ。でも、そんなこと全然なかったし、1kHz~2kHzあたりがギラっとしちゃうと弾きにくくなるんですけどそういったこともない。
ティアック:
ありがとうございました。では次に、ピアノの音を録音して聴いていただきたいと思います。
菊地:
個人的にピアノにはこのマイクプリ、と決めていたくらい相性が良いプリアンプがあったんですが、出鼻をくじかれた感じです(笑)。良く言えば素直、悪く言えば地味とも言えるけど、楽器が変われば印象も変わるので。例えばアコギ録るなら『UH-7000』がいい、なんていう場面もあるだろうなと。「音のキャラクター」を語れるレベルにはあるな、と思います。「こういうキャラクターのヘッドアンプです」と語れるレベルの品質。だから、SSLと聴き比べしたら面白いんじゃないかな。とにかく素直です! クセがないっていうのは間違いない。
ティアック:
クリスさんはいかがですか?
クリス
今聴いた感じは、なかなかいいですよ。打楽器とかも試してみたい。
立川:
SNもいいよね。
ティアック:
S/N比にはかなりこだわっています。
菊地:
ラージモニターで聴いたって、ノイズがこれだけしかないんですから(笑)。ラージで聴いて、かろうじて分かる程度。
立川:
びっくりした。『DA-3000』のテストよりもびっくりした。
ティアック:
驚いていただけたようで、嬉しい限りです。是非今後も音楽制作にご活用いただければと思います。本日はありがとうございました。

左上より(敬称略)
アシスタントエンジニア井澤さん、クリスさん、立川さん、菊地さん

有限会社 アルデバラン
CRESCENTE STUDIO (クレッセントスタジオ)
http://www.crescente.co.jp/

プロフィール

菊地健太郎(Kentaroh Kikuchi)

クレッセントスタジオ所属レコーディングエンジニア。最近は松山千春、所ジョージ、Gackt、スピッツ、新妻聖子、B1A4、浜田真理子などPops/Rockから井上陽介、川嶋哲郎、鬼武みゆき、大坂昌彦、本多俊之、ScarletMaudなどJazz、そして劇伴/CMなど広範囲にわたり様々な作品を手掛けている。現同スタジオチーフエンジニア。

立川智也(Tomoya Tachikawa)

立教大学在学中よりベーシストとしての活動を開始する。卒業後、松井秋彦とバンド「Junky Funk」を結成しCDデビュー。同時に森公美子、久石譲、キリンジ、デーモン小暮、瀬奈じゅん、一路真輝など数多くのアーティストのライブやレコーディングに参加。
作編曲家としても活動しており、NHK『トゥトゥアンサンブル』『まちかどド・レ・ミ 』『ドレミノテレビ』や、ミュージカル『戯伝写楽』、ディズニーリゾート、六本木ヒルズ、新江ノ島水族館、などのショーの音楽監督としても活躍。「すみだ水族館」「京都水族館」のサウンドプロデュースも手がけている。2013年に作曲したワールド・ビジョンのTVCMはギャラクシー賞に入賞した。

http://www.tthome.jp/

クリストファー・ハーディ(Christopher Hardy )

アメリカ出身。西洋打楽器の基礎を持ちつつ、中近東、北アフリカ、西アフリカやラテンの代表的打楽器であるハンドドラムのスペシャリストとして高い評価を得ている。その活動はルネッサンス音楽からジャズ、R&B、ヒップホップ、ポップ、現代~ワールドミュージックなどと広く通用する語法を備え、独自の打の創造に満ちたアプローチを織り成している。これまで渡辺香津美、山下洋輔、林英哲、宮本文昭、谷川俊太郎、加藤和彦、本田美奈子などと共演。
ビクターよりリリースされたソロCD・DVD「タッチ」をリリース、月刊ステレオ誌発表により最優秀録音賞第1位となり同時にアメリカ発売。近年はハープ奏者彩愛玲氏とプリミティブな音世界も展開中。洗足学園大学非常勤講師。シルク・ドゥ・ソレイユ「ZED」のミュージシャンとしてステージに参加。創作的なサウンドを展開している。

http://christopherhardymusic.com/

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