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32ビットフロート録音とは?

 

デジタルレコーディング技術の発展はこれまで長い道のりを歩んできましたが、今日では「32-bit floating point(浮動小数点演算)」の録音方式が最新の技術と言えます。オーディオ制作における、16ビット録音から24ビット録音への移行は、忠実度や音質を大きく向上させました。ここにきて、更に進化した技術である32ビットフロート録音が重要視されているのは何故なのでしょうか?そもそも32ビットフロートとは何なのか、そして24ビット録音と比較して本当に大きな違いがあるのか?このページでは、これらの疑問に対する解説、また、32ビットフロートの活用方法やオーディオ制作にもたらす利点を詳しく説明します。

What is 32-bit Float Recording?

 

ビット深度とその重要性

オーディオレコーディングで言うビット深度は、オーディオを歪ませることなく捉える自然なダイナミックレンジを表します。クリップ(音割れ)せずに録音できるレベルを決定するのはもちろんですが、現状のノイズフロアからどれだけ高いレベルで録音できるかを決定することも重要です。つまり、高いビット深度で録音することでより大きな音を歪みなく録音できるだけでなく、録音した音声の可聴帯域のノイズフロアが低くなるということです。例として、それぞれのビット深度のダイナミックレンジを比較してみましょう。

16ビット=約96dBのダイナミックレンジ
24ビット=約144dBのダイナミックレンジ
32ビットフロート=約1680dBのダイナミックレンジ

スネアドラムの近くにマイクを置いた場合など、96dB以上の高い音声レベルを記録する場面は沢山ありますが、24ビットで144dBのダイナミックレンジを確保すれば、あらゆる音を捉えるのに十分と言えます。では、何故32ビットフロート録音が良いのでしょうか?どれほどの大音量となれば32ビットフロートのダイナミックレンジが必要になるのでしょうか。32ビットフロート録音の真のメリットは、ノイズフロアの低さにあり、レコーディングエンジニアやビデオグラファーなど、録音のプロフェッショナルのワークフローに大きなメリットをもたらします。

Bit Depth and Why It Matters

ダイナミックレンジと人間の声

32ビットフロート録音をより分かり易く説明するために、世の中で最もワイドレンジな音源の一つである人の声を例にとってみましょう。ささやき声の場合、レンジは20~30dB程度ですが、叫び声(特に絶叫)となると、ある周波数では120dBを超えることもあります。これらすべてを捉えるにはとても広いダイナミックレンジが必要です。そのため、ボーカルレコーディングは音楽制作の中でも難しい部類に入ります。動画撮影で話し声を録音する場合、人間の自然な話し声を捉えるだけでも広いダイナミックレンジを要します。また、声の上限である約120dBは、24ビット録音の144dBの範囲に収まりますが、あくまでも理論上の考え方です。
実際には、24ビットや16ビットで録音する場合、レコーダーの入力レベルを最適化しなければ、元の音に最も忠実な音源を捉えるのが難しいのです。入力ゲインが低すぎると、大きな叫び声は歪みなく録音できますが、静かなささやき声はノイズフロアを超えるのがやっとです。これに対し、入力レベルを高くしすぎると、静かなささやき声はノイズフロアを超えて明瞭に聞こえますが、大きな音になると録音が歪んでしまうリスクがあります。

仮に音割れもなく話者の声を綺麗に録音でき、そのまま編集に移行し、DAW、またはNLEソフトウェア上での編集時に、録音した音源の中で話者の声が小さすぎて聴き取りにくい部分を見つけたとします。この部分が重要な内容だった場合、部分的にゲインを調整して聴きやすくする必要があります。その際、24ビットのオーディオファイルであったとしても、このような部分のレベルを上げようとすると、同時にノイズフロアの余計なノイズが発生したりします。また、音量を合わせたとしても、適切な音量で録音された音声に比べて、静かな部分の音質が忠実度を欠いていることに気づくかも知れません。より高い入力レベルで録音した場合でも、音が大きくなるにつれてクリップが発生するリスクが上がり、小さな音もノイズを伴わずにレベルだけを上げることができなくなります。そこで、32ビットフロートレコーディングの出番です。

Dynamic Range and the Human Voice

なぜ32ビットフロート録音が必要か?

TASCAM Portacapture X6やPortacapture X8のような32ビットフロートレコーダーなら、デジタルクリッピングを気にすることなく録音が可能です。実際、32ビットフロートレコーダーでは入力レベルを設定する必要すらありません。32ビットフロートが提供する広大なダイナミックレンジにより、音声は常にノイズフロアを大きく超えて録音され、高い入力レベルによる歪みも基本的にありません。シグナルチェーンの各ポイントでの入力レベルを最適化することに精通している録音のプロならば、32ビットフロート録音で入力レベルを調整する必要がないという事実は、信じられないことかもしれません。しかしながら、実際には32ビットフロート録音では、レコーダーの電源を入れて録音ボタンを押すだけ、入力レベルを設定することなく低ノイズで、高忠実度のオーディオを確実に録音できるのです。

32ビットフロートで録音した音声は、DAWやNLEソフトを通して音量を上げても、ノイズが目立ちません。また、24ビットや16ビットのレコーダーではクリップしてしまうような大音量でも歪みやクリップを発生させることなく録音でき、編集時にレベルを下げることも可能です。32ビットフロート録音により、信号レベルを気にすることなくセットアップや録音ができ、そしてノイズやクリッピングで音声を台無しにすることもありません。

Why 32-bit Float Recording?

32ビットフロート録音の仕組み

TASCAMのPortacaptureシリーズのような32ビットフロートレコーダーが、これほど広いダイナミックレンジを捉えることができるのは、ADC(アナログ/デジタル変換)に関係します。16ビットや24ビットのレコーダーでは、1つのADCが全ダイナミックレンジを処理するので、音声がその範囲に収まるように入力レベルを設定する必要があります。大きすぎる音声は、波形上では頂点がクリップして音割れが生じてしまい、その都度その箇所を破棄しなければなりません。一方、静かすぎる音声は、後から音量を上げると過大なノイズが発生し忠実さに欠けてしまいます。
32ビットフロートレコーダーでは、1つのオーディオファイルを作成するために、2つのADCが連携して動作しています。1つの「ローゲインADC」は高レベルのオーディオに最適化され、もう1つの「ハイゲインADC」は、低レベルのオーディオに最適化されています。大きな音でハイゲインADCがクリップしても、ローゲインADCはクリップしません。また、音が小さすぎてローゲインADCがノイズフロアの影響を受け、音を明確に捉えることができなくても、ハイゲインADCはノイズフロアに対して十分なヘッドルームを持っています。つまり、ローゲインADCが大きな音の部分を処理し、ハイゲインADCが静かな音の部分を処理するのです。

その結果、32ビットオーディオファイルは、大きな音によるデジタルクリッピングがなく、静かな部分もノイズフロアを十分に上回るレベルを得られます。DAWやNLEソフトウェアでは、32ビットフロートのオーディオファイルの大音量の部分が視覚的にクリップされているように見えるかもしれませんが、ゲインを下げると実際には歪みがなく、波形も滑らかで上部が途切れていないことがわかります。同様に、静かな部分のゲインを上げれば、ノイズを過剰に持ち上げることなく音量を上げることが可能です。このように、32ビットフロートで録音をしておけば、最初から適切な入力レベルで録音したかのように、鮮明なサウンドを得ることができます。入力レベルを微調整したり、クリップした音声を修復したり、低レベルの音声からノイズ除去する作業に長い時間を費やすことと比べると、32ビットフロート録音の技術は、まさにマジックのように思えるでしょう。

How 32-bit Float Recording Works

32ビットフロート録音でワークフローを改善

ビデオグラファーやレコーディングエンジニアであれば、1度の録音だけできれいな音声を収録することがいかに重要であるかをご存じでしょう。例えば結婚式や卒業式などの大きなイベントでスピーチ収録した場合に、録音レベルが悪かったからといって話者に再度同じスピーチをお願いすることは不可能です。レコーディングスタジオのような管理された環境でも、音割れや過剰なノイズによって大切な場面を失うことは避けたいものです。32ビットフロート録音は、ワークフローからこれらの障害を取り除き、常に高品質な音声を確実に捉え、録音レベル調整以外の作業に集中することを可能にします。TASCAM Portacapture X6やX8のような32ビットフロートレコーダーを使えば、より早く録音を開始でき、より良い音声を捉えることにより、 DAWやNLE編集ソフトウェアで音声処理せずに、高音質の作品を作り上げることができます。

32-bit Float Recording Can Save Your Productions

 

対応製品

  • DR-10L Pro
    32ビットフロート対応ピンマイク付き小型オーディオレコーダー
  • Portacapture X6
    32ビットフロート録音 6トラックポータブルレコーダー
  • Portacapture X8
    32ビットフロート録音8トラックハンドヘルドレコーダー
 

 

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